
【政治考察】 マイナカードと健康保険証を『マイナ保険証』として一体化し、紙の保険証を強制廃止する岸田内閣へ“倒閣”の暗雲が立ち込めている。
早ければ今秋の『総選挙』で自民党が勝ったとしても、令和版『所得倍増計画』を再掲する機会無く、マイナ保険証が鬼門となり、短命内閣に終わる可能性もある。
令和五年六月二十一日の記者会見にて岸田総理は、紙の保険証の廃止を来秋とする原則の方針は変えなかった。
河野太郎(癸卯)大臣等へ総点検の指示を出したが、総点検の完了=今秋(マイナポータル二十九項目)、措置完了=来秋(データの修正作業、窓口対応の円滑化、マイナカードや資格確認書の取扱い環境の整備)とスケジューリングがタイト過ぎて、担当の「富士通」と言えども未完となる恐れがある。
<肝は中堅・シニア官僚>
この誤ったスケジューリングは、関係閣僚(デジ庁・厚労省・総務省)のITに関する知識不足と各官僚のコミュニケーション不足にある。二省一庁に亘る本システムは、一.三億人のビックデータを国家として完全管理する。
各個の紐付け間違いという初歩的な「名寄せ」レベルのミスが多発。企業であれば、事業中止を余儀なくされるレベルだ。例えば、「銀行口座」で紐付けの間違いが多発している、と考えたら良い。その銀行は倒産するだろう。
この“致命度”を、岸田内閣の関係閣僚は知覚していない。
国家データを扱う以上、関係閣僚及び関係官僚と富士通は、相当に密なコミュニケーションを練り上げていく必要がある。
その際に中堅・シニアの官僚が肝となる。
中堅・シニア官僚の大罪

この中堅・シニアの官僚が、富士通とのコミュニケーションを取れなかったからこそ、名寄せレベルでミスを起こす。恐らく、中堅・シニア官僚は「何故にミスが多発しているのか?」を理解していないのであろう。
それは「フールプルーフ」の知識である。
フールプルーフとは、人のミスを防ぐ事前の仕組み作りの事であり、国家試験「ITパスポート」を中堅・シニア官僚が保持していれば、分かるレベルである。
詰まり、マイナカード・マイナ保険証の問題は、中堅・シニア官僚及び関係閣僚がITに関して無知である点となる。その為、プロである富士通の関係社員達とコミュニケーションが取れない。略、感情論でマイナ保険証のシステム作りを進めているのであろう。
故に、フールプルーフがおざなり(いい加減)になり、本当に初歩的なミスを多発させてしまっている。
ITに弱い永田町・霞が関
これは、第三次産業革命下の平成時代の失敗を未だに続けているコトに他ならない。現在は第四次革命下であるが、永田町も霞が関も、未だにITに疎い者が実権を握っており、DXどころかIT化できない(国会議員の質問通告等)。できない、と言うよりはITを分からない。
その為、平成二十二年にITを重んじ、国家政策を反映させた中国にGDPで抜かれ続けている。
確かに河野大臣はTwitterに強い様だが、ITパスポートの内容を如何程に理解しているのだろうか?依って、リカレント教育を受けるべきは、閣僚になる国会議員と中堅・シニア官僚である。
<打開策>

打開策は一つだ。少なくともITパスポートを理解している若者・若手の官僚と富士通が密なコミュニケーションを取り、中堅・シニア官僚の上司が若者・若手官僚の意見を尊重・採用するコトだ。
できれば、若者・若手官僚には国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」等の上級国家資格ホルダが欲しい。富士通は上級ホルダの人材を充てているだろうから、そのカウンタパートとして同級の官僚は欠かせない。
例えば、弁護士と宅建士では、国家システムに関する話しは通じ合えないだろう。
ゼネラリスト不足
後は、中央政府と富士通に共通する点は、「ゼネラリスト」不足と推察できる。現在の日本は「スペシャリスト」重視の嫌いがあるが、“全体を見渡せる程の知識”を有すゼネラリストの存在が欠かせない。
本来、現場の最高責任者はゼネラリストであるべきだ。
当然に個々のゼネラリストにも適材適所があるので、国家システムをマイナ保険証へ刷新するのであれば、五年~十年のスケジューリング観で慎重に、確実に、数多のシミュレーションを施し、システム設計を行っていくべきだろう。
フェールセーフ

先のフールプルーフと共に、最低限で抑えるべきは「フェールセーフ」がある。人や機械のミスをフォローする事後の仕組み作りのコト。こちらもITパスポートで学べる。
こちらのフェールセーフにも一.三億人のビックデータともあれば、相当に時間を要した方が良い。
フールプルーフで事前予防し、ミスが起きてもフェールセーフで事後フォローする。この両者がマイナカード・マイナ保険証で機能しなかった。
一重に雑
他にも、「マイナ保険証の設備投資には補助金が出るが、毎月の維持費は医療機関持ち」や「マイナ保険証への対応が難しい医療機関のバックアップ・フォローが無い」、「ITに疎いシニアへの移行補助(ITサポート)が無いに等しい」等と、そもそもが国家事業として雑である。
外国人の医療保険制度の悪用を防ぐ目的もある為、一概にマイナ保険証自体を悪とは言えないが、プロの富士通とのコミュニケーションを密にし、余裕をもって制度移行するのが望ましい。
その為には、最低でも関係閣僚及び中堅・シニア官僚が、ITのリカレント教育をされたい。さもなくば、マイナ保険証に掛かる諸問題は、今後数年間もシニア国民を中心に噴出し続け、岸田内閣は短命内閣と終わるであろう。
岸田内閣は、マイナ保険証が鬼門を分かられたい。
記事:金剛正臣
画像:マイナンバーカードの健康保険証利用、フェイルセーフとフールプルーフ~意味の違いと事例、試験区分一覧/IPA