
【社会報道】 令和五年六月十四日に英「オックスフォード大」のロイタージャーナリズム研究所は、『ロイター・デジタルニュースリポート 二〇二三概要』の日本語版を発行した。
サンプル数は、各国二千ずつ。
デジタル化が、人々のニュースに関する考え方や接し方に対し、如何様な影響を与えているかを調査・分析している。NHKは昨年より参加。
<YouTubeよりもFacebook>

本リポートでは、若年層が新メディアを通じてニュースへアクセスし、旧メディアを忌避している事実を強調。
特に新メディアの中でも、ニュースのウェブサイト・アプリよりもSNSを通じたニュースへのアクセスが逓増中。両者が逆転したのは、令和元年より。中でもTikTokやYouTube等の動画系が増加している。
以下が、世界における過去一週間にSNSをニュースの為に使用した人の割合(平成二十六年~令和五年)のランク。
Facebook
YouTube
WhatsApp
Instagram
Twitter
Facebook Messenger、TikTok
Snapchat
TikTok、Instagram、Snapchatでは、ジャーナリストよりも芸能人・インフルエンサ・ソーシャルメディアの有名人に注目。対照的にFacebookやTwitterでは、報道機関やジャーナリストが、依然として話題の中心になっている。
オンラインニュースの課金ユーザは、昨年に同じ二割。最高は「ノルウェー」の四割、最低は「日本」「英国」の一割。
米国を含む幾つかの国では、購読者の大半が、複数の購読契約を結んでいる。
読む方が早い

調査対象の国・地域では、オンライン利用者の大多数は、ニュースを「見たり聴いたりする」よりも、「読む方が良い」と。その理由は、文字の方が情報を得るのが早く、操作もし易いから。フィリピンやタイ等の一部の国では、文字よりも動画を好む。
ニュースへのアクセスは、ここ暫くGoogleとFacebook(現Meta)という二つの巨大企業に支配されており、最盛期には両社でニュースサイトへのオンラインのトラフィックの略半分を占めていた
本リポートでは、多くの国で寡占が若干弱まった。日・韓・台・印は、「検索+アグリゲーター(Yahoo!ニュースやGoogleニュース等)」がオンラインでニュースに触れる主な方法。
Twitterのユーザは、他のネットワーク利用者よりも「硬派なニュースの話題(政治やビジネス等)」に注目する傾向がある。対し、TikTok・Instagram・Facebookの利用者は、ニュースに関連した楽しい投稿等に注目する傾向が僅かに高かった。
<ニュース参加は減>

全年齢層で、「アルゴリズム」にニュースを選んでもらうコトが「ニュースを得る良い方法だ」と思う人の割合は、平成二十八年と比べて減少。「そう思わない」の割合は略変わらず、「どちらでもない」が増加。
ニュースへの参加(コメント等)は、各国で減少(二割)。「目立った議論の殆どは少数の活発なユーザに依るものとなっている。」と断じた。その少数ユーザが政治的・文化的な議論で、実勢よりも大きな影響力があると分析(イノベータ理論)。しかし、当該ユーザは縮小傾向にある。
フェイクニュース等につき、主にSNSを使用する人が「不安を感じる割合」は六割強に達した。
無料のニュースにはフェイクニュース等が入り込み易いが、有料のニュースに関し、調査二十ヶ国で「料金を支払った人の割合」は二割弱に留まっている。
課金理由
多くの既存メディアが定期購読や会員制といった継続的な読者収益モデルに重点を置こうとしている事は驚くに当たらない

米国では課金ユーザの内、六割弱が二社以上と契約。その多くが全国紙と地方紙の組合せ。以下が、米国ユーザの課金理由。
より質の高い/独自性の高いコンテンツ
ブランド/ジャーナリズムへの共感
優れたジャーナリズムへの資金援助
ゲームパズルやニュース以外の情報;アプリの使い易さ等
以下は、調査二十ヶ国における無課金ユーザーの課金決定の理由。
何もない
安さ/柔軟性
より価値あるコンテンツ
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読む=六割弱

本年では、初めて「ニュースを避ける方法」も尋ねた。定期的にニュースを避けようとしているグループには「若年層」「低学歴層」が多く含まれている事が分かった。
本年は、ネットニュースの利用時に「文章」「音声」「動画」の何れか好むかも尋ねた。
読む=六割弱
見る=三割
聞く=一割強
若年層はSNSを通じ、ニュース動画へのアクセス割合が高い。他方、ニュースサイトやアプリから動画へアクセスする割合は低かった。
画像:ロイター・デジタルニュース リポート2023/NHK