【政治・財政考察】 世代会計という言葉がある。以下は野村證券の定義。
個人が生まれてから死ぬまでに国に支払うお金と国から受け取るお金を現在の貨幣価値に換算し、世代ごとに算出したもの。
税金や社会保険料、年金保険料など政府に支払う「負担」から年金や医療保険、公共サービスなどで政府から得られる「受益」を差し引いた「純負担額」を世代間で比較する
「氷河期世代」や「ゆとり世代」以降は、知らなければならない事実がある。この世代達は負担超過の世代である。それ以外の世代は全て受益超過だ。
これは何を意味するのか、今の「中堅・シニアを養う為に若者・若手が一生、身銭を切る」事を意味する。彼らの為に他の世代よりも命を削って頑張って働き、納税する事を言う。社会保障は平等である筈なのに、不平等どころか現若者・若手に集中して負担を押し付けている。
<今から二十年前の世代会計>

今回は事実のみを記す。
上図は今から二十年前の「生涯を通じた受益と負担」のグラフ。『年次経済財政報告(平成十五年)/内閣府』から。第二次小泉内閣にて作成された。報道現在の八十二歳以上は、生涯を通じて六千五百万円のプラス(焼け跡世代)、ここから十歳毎に現・七十二歳以上なら二百万円のプラス(団塊の世代)。
プラスの世代はここまで。
現・六十二歳以上ならマイナス一千万円(しらけ世代)、現・五十二歳以上ならマイナス一千七百万円(バブル世代)、現・四十二歳以上ならマイナス一千九百万円(氷河期世代)、そして現・四十一歳以下ならマイナス五千二百万円(ゆとり世代以降)と試算していた。
※括弧内の世代はあくまでも近辺。
如何だろうか。焼け跡世代とゆとり世代の差は、一億一千七百万円。ゆとりは焼け跡世代よりも生涯賃金の半分となる一億円も国から貰えない。その一億円はシニアに注ぎ込む事を意味する。但し、生涯賃金は大卒の正社員で、且つ、今までの計算の仕方の場合(年功序列や終身雇用)だ。
下の世代が、シニアを生かす為の国の試算と、見て取れるだろう。
子ども・若者・若手が負担の前提

次いで二年後の十七年には試算が変わった。焼け跡はプラス四千九百万円に下がり、ゆとりはマイナス四千六百万円へ上がった。変わる理由はGDP成長率や金利、出生率の動向、政府支出等で左右される為である。特に国債の増加は大きいだろう。
それでも、ゆとりと焼け跡の差は九千五百万円と略一億円。今の都知事の世代と比べても、六千二百万円の差がある。
一番の問題は小泉内閣以降で、上図「生涯を通じた受益と負担」のグラフが『年次経済財政報告』には出てこなくなった事だ。
よって、十八年前が最新。おかしくはないだろうか?国が世代会計を隠している。国からの社会保障は平等であるべきで、社会保障が国の予算の最も大きな費用項目なのに、世代会計のグラフが無い。この国の中堅・シニア達の小狡さを感じざるを得ない。
<今から十年前の世代会計>

上図は平成二十八年のグラフだ。元・財務省で「中曽根康弘 世界平和研究所」の北浦修敏 研究員の『世代会計の分析 ―財政の持続可能性を踏まえて―/財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成二十八年第一号』。北浦研究員は、第三次安倍内閣で内閣参事官も務めた。 グラフの横軸が年齢。縦軸が受益超過・負担超過。計算方法における前提が、国とはやや異なる点を北浦研究員は指摘している。
最大の受益超過は、現・七十五歳前後のプラス四千万円超。最大の負担超過は現・三十二歳前後のマイナス二千万円程度。差は六千万円となっている。それでも六千万円も異なる。
安倍内閣で「法学世代」以降はプラスへ

上図は、負担超過の世代を分かりやすく加工したもの。幸い今の二十歳以下(法学世代以下)はプラスに転じるが、それまでの中堅・シニアの負担は、やはり氷河期・プレッシャ・ゆとり・脱ゆとりの四世代で請け負う。実際には擦(なす)り付けられている。 資本主義の観点からでは、この四世代がシニアのオーナーとも言える。実際に年金(賦課方式)で、現在の中堅を含めてシニアを食わせていくのが四世代だ。だが各種法律や仕組み、枠組みを決めているのは中堅・シニアである。政治の現場や世論に一番負担を強いている四世代の意見が反映されていない。そもそも意見を聴く姿勢さえも疑わしい。 政府や地方自治は、四世代の意見を最も重要視すべきである。四世代の主軸である若者・若手が日々、苦労している理由は、中堅・シニアによる悪政(特にシニアの世論)が原因なのだ。前掲の三グラフで明快だ。
ただ、四世代にも責任はある。政治への参加を積極的に行ってこなかった。四世代を代弁する議員を国会や地方議会に送ってこなかった。ないし、立候補した四世代を支援してこなかった。 だから、やりたい放題やられている。
中堅・シニアの奴隷にならない

若者・若手は、この世代会計のグラフを共有されたい。何故、若者・若手は他の世代よりも辛い日々を送っているのか、未来に希望が無く、ちょっと先を考えたならば絶望したくなるのか。全ての原因は、中堅・シニアから金や機会(挑戦のチャンス)を尋常ではなく搾取されているからに他ならない。 今回は世代別で国と受益の事実を見てきた。
我々は中堅・シニアの奴隷ではない。中堅・シニアが世代間の対立を嫌がる理由が判明した。彼らが都合よく四世代から搾取し続ける為に、「世代間対立」を悪とする。実際の悪は、搾取の事実を無視する中堅・シニアではないだろうか?
打開策
打開する方法は一つ。政界へ四世代を送り、代弁者を沢山つくる事。我々は、第二次・安倍内閣から取材を続けている。安倍内閣自体はシニアの悪政(搾取的世論)と闘っている事を付したい。
平成二十五年の参院選、最終日に故・安倍晋三(甲午)総理は秋葉原にて「七十年代、八十年代の日本にできて、今の若い人達にできない筈がないじゃありませんか!」と鼓舞していた。
当時の好景気だった日本の環境を安倍総理は、若者・若手に渡したかった。この日以来、安倍総理は選挙の度に若者・若手の事を話し続け、昨年の総選挙で暗殺された。
この世代会計を是正する為、日本で唯一、若者・若手を代弁する報道機関『報道府』に力を貸して頂きたい。
記事:京秦正法、金剛正臣